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小瀧望主演「ザ・ビューティフル・ゲーム」感想とベルファスト観光

今年の1月に小瀧主演のミュージカル「ザ・ビューティフル・ゲーム」を観劇したのでその感想と、その舞台となった北アイルランドベルファストにも行ってきたのでその旅行記を併せて書きます。ベルファストはイギリス・アイルランド旅行の一環で訪れました。導入として最初に旅行の目的について簡単に触れた後、本編に入ります。

目次

 

前置き~旅行の経緯

先日イギリスとアイルランドに1人で1週間の旅行をしてきました。ロンドン5泊、ベルファスト1泊、ダブリン1泊です。

目的は

  • ウェストエンドでミュージカルを観たい
  • グローブ座でシェイクスピアの劇を観たい
  • ベルファストでザビューティフルゲームの舞台となった場所の空気を感じたい

でした。ちなみに今回果たせなかったので次回やりたいこととしては

  • ナショナルシアターで演劇を観たい
  • グローブ座のバックステージツアーに参加したい
  • ロイヤルオペラハウスでバレエを観たい

です。ロンドンで舞台・ミュージカル関連もたくさん見てきたので、また別記事にまとめたい(いつになるか...)。

 

ザ・ビューティフル・ゲームの感想

公式サイトのリンクを貼ろうと思ったら既に削除されていた... 代わりにグローブ座のリンクを貼ります。あらすじはこちらからどうぞ 

https://www.tglobe.net/page/thebeautifulgame

小瀧の初主演ミュージカル。予想を遥かに超えてとても良かった!!!前から小瀧の声は太くて安定感あって好きだったけど、ミュージカルにぴったり!!ジョンとメアリーの二人のシーンもかわいくて好きだし、試合後にパブで飲みながらどんちゃん騒いでるシーンも好き。女の子3人衆がそれぞれとてもキャラが立っているのも好きだった。結局アメリカに逃げたクリスティンが幸せな家庭を持てたというのがね... もちろんその後アメリカでどのような苦労があったかは分からないけど。アイルランドからアメリカに渡った移民のほとんどはジャガイモ飢饉がきっかけと思ってたけど、宗教対立や迫害に遭って逃げてきた人もいるんだろうな。

トーマスとジョンの掛け合いも迫力があって良かったけど、もっとトーマス目線があってもよかったかなーとも思う。グレゴリーが暗殺された一件をきっかけにIRAに加入し、反対するジョンに対してシニカルに述べるんだけど、描かれ方が悪者に見えるというか。実際そうなんだけど、彼の言い分やその考えに至った経緯を彼目線で聞いてみたかったなーと。あと刑期を終えたジョンが家庭に戻って平和に暮らすの、あっさりだなーとは思った。この作品の元となった実際のサッカー選手は、史実では獄中で亡くなってしまうのよね。(刑期を終えたジョンが完全に魂の抜けた様子でいるのは、ある意味癖に刺さる...)

それにしてもめちゃくちゃ泣いてしまった... ウクライナの戦争があってから、これまで平和に暮らしていた市民が急に戦争に巻き込まれ被害を受けることに一層実感がわくというか。これまで全く北アイルランドの歴史については知らなかったけど、ちゃんと知りたいなと思って調べたり現地に行ってみたりしました。

北アイルランド紛争についての前提

ザ・ビューティフル・ゲームのお話は北アイルランド紛争が前提となっています。遡れば1100年代の歴史から端を発し、特に1960~1980年代に激化した問題ですが、簡単におさらいしておきます。より詳細には「北アイルランド紛争」でググったりWikipedia等をご覧ください。

アイルランドは独立した国ですが、アイルランド島の北部、「北アイルランド」はイギリス領です。背景には大変複雑な歴史がありますが、前提理解のため非常にざっくりまとめてしまうと、下記2点を押さえておけば大丈夫です。
アイルランドカトリックだが北アイルランドプロテスタント
・ただし北アイルランドにも一部カトリック派の住民がおり、イギリスによる統治に反対している


アイルランド島は全体として元からアイルランドに住んでいる人(カトリック)が多いのに対し、北アイルランドはイギリスから来た人たちが多く住んでおり、そのため親イギリス心情を持っており、イギリスの一部となっています(地理的にも近い)。
二項対立で単純化して考えると議論を追いやすいので、それぞれに関連するものを挙げると
プロテスタント派: 北アイルランドでの主流派。親イギリス。オレンジ
カトリック派: 北アイルランドでの少数派、アイルランドでの多数派。反イギリス、親アイルランド。緑。共和党(Republicans)。この過激派組織がIRA。ザ・ビューティフル・ゲームのサッカーチームのメンバーはデル以外は皆こちら側。北アイルランドで彼らが虐げられていることに対する反発が全ての発端となっている。少数派と言えど、北アイルランドの3割程度はカトリック

 

1998年にベルファスト合意が交わされてからは大きな衝突はありませんが、2016年にイギリスがEU離脱を決定して以降、また緊張状態が続いています。イギリス政府は北アイルランドのテロ脅威レベルを今年3月末に一段階引き上げました。北アイルランドEU外でアイルランドEUという複雑性...。ベルファストーダブリン間はパスポート提示の必要なしとかの特例はあるけれど、関税とかはどうなんでしょうね?

 

ベルファスト北アイルランドの実情を目の当たりにして

今回ミュージカルの舞台となったベルファストの街を実際に訪れて博物館に行ったりして、まだ解決していない現在進行形の問題であることをまざまざと感じました。

私が現地で撮影した写真も載せますが、4年前のiPhoneのデフォルトカメラを使っている+構図とか加工とか全く分からないので、雰囲気だけ掴んでもらえればと思います。

クラムリン通り刑務所

www.crumlinroadgaol.com

ザ・ビューティフル・ゲームの刑務所のシーンはもちろんなんだけど、少年たちのことも思い出した。とにかく暗くて狭くてひんやりしている。当時の独房や裁判所と刑務所を繋ぐ廊下、食事の様子等を見学できます。

展示物の解説が基本パネルか動画なんだけど、動画に英語字幕がないのがなかなか聞き取りづらかったです…。アイルランド訛りなのと私のリスニング力の問題の両方。お金を払えば多言語対応しているんだけど、日本語は無かった、残念。。グラフィックスを使った動画で初めから歴史を解説してくれる動画が分かりやすかった。

クラムリン通り刑務所
平和の壁

プロテスタントカトリックの居住区を分ける壁に、様々なグラフィックが描かれている。平和を望んで描かれているので、「平和の壁」と言われている。街中に点在しているのだけどこちらはプロテスタント側に面している壁で、意外とキャラクターが描かれていたり訪れた人が自分の名前を書いていたりポップなものも多い。

舞台の幕には壁に落書きやいろんな言葉が書かれていましたが、これの再現だったのか、と。舞台の幕の中では"There is no good war and bad peace"という言葉が印象的でした。

平和の壁。RIP, Give peace a chanceという文字が見える

意外とポップなキャラクターが描かれていたりする

反対にカトリック居住区側は街中を歩いているだけでも少しピリピリとした緊張感がある。もちろん普通に生活を営んでいるだけではあるのだけど、なんとなくの空気感で。アイルランドの国旗とEUの旗を掲げている家が多い。昼間1人で歩いているだけでも感じたので、暗い時間に歩くのは避けた方が良いでしょう。

プロテスタント側の平和の壁のすぐ裏側にはClonard Martyrs Memorial Gardenという記念碑があったり、家の壁に追悼する絵が大きく描かれていたり。

Clonard Martyrs Memorial Garden

家の壁に追悼する絵が大きく描かれているのをよく見かける

壁自体は道を隔てているので塀のような感じでそこまで大きな違和感はなかったけど、この道の真ん中に置かれた門が衝撃だったかも。こうまではっきりと居住区が分かれているのか、と...。高速の料金所のよう(?)

居住区を分ける門

平和の壁は元々2023年中に全て取り壊す予定でしたが、反対が多くあまり進んでいません。ともあれ壁は取り壊されていく方向だと思うので、今のうちに見られて良かった。壁は色んな場所に分散しているので、効率的に回るにはBlack taxi tourというタクシーで回って運転手さんが解説してくれるツアーを使うのが便利。私は知らずに徒歩で回りました... クラムリン通り刑務所のウェブサイトまたはGet Your Guideから予約可能です。

 

Irish Republican History museum

公式サイトもないような有志で運営しているこじんまりした博物館で、入館無料。営業時間が10〜14時と短いのに注意!ただ共和党側の歴史を1番よく伝えていると思う。反対にオレンジ党側の歴史は、Orange Heritage Museumがあります。少し遠かったので今回は行かなかった。

共和党側にまつわる色んなものが展示されていたり、歴史がパネルで丁寧に解説されていたり。先述したザ・ビューティフル・ゲームの作品の元となったサッカー選手は獄中でハンガーストライキで命を落としてしまうのですが、このハンガーストライキの解説が文字で読むだけでもつらい。ものすごく壮絶でむごい。

数十年前の抗争に対し、イギリス警察が非武装の市民に対しても攻撃したか否か、イギリス警察による拷問があったか否か等でつい数年前に決着したことも有れば、まだ裁判で争っていることもある、という解説が決して過去の出来事ではないんだなと感じさせられた。

 

以上です!他にもダブリンの中央郵便局はアイルランド独立戦争のきっかけとなったイースター蜂起で司令本部が置かれ、今では観光地となっていて興味があったのだけど、今回は時間の都合で行けず。もし次回行く機会があれば行きたい。

ザ・ビューティフル・ゲームをはじめとした一連の経験を個人的な記録としてブログに残せて良かった。